・Making of 漢の風景・
記憶のための記録




佐倉「カァーット!」(カチン)
一同「おつかれさまでしたーっ!」
新大阪駅新幹線ホームに出演者達の拍手がわき起こり、列車から澤田と古田が降りてくる。澤田の持つ紙袋から古田が花束を取り出し、佐倉に差し出す。
古田「佐倉さん、おつかれさまでした。これ、ダメになっちゃったから貰って?」
佐倉「……蹴りくれた花束かい……」
呆然と受け取る。
一同、口々に「まあまあ」と佐倉をなだめすかし、ホームのベンチに座らせ、自販機の大清水緑茶が配られる。
古田 「それじゃまあとりあえず乾杯」
一同「かんぱーい」
パシュパシュと缶を開ける音の中で一人暗い顔の佐倉。
諒介「どうしたの」
佐倉「うん。その…」
一同を見回す。
佐倉から反時計回りに、右隣に座る諒介、その前に立つ高橋、河上、古田、澤田。
佐倉「…とうとう、女性が一人も出て来なかったなあって」
ヒュオーという効果音と共に扇風機の風で一同の髪が揺れ、乾いた草の塊がホームを転がっていく。
諒介「…こんな無味乾燥の話を読んでくれた人は偉いよね…」
佐倉「感謝しなくっちゃね…」
古田「ハイ、カメラこっち」
一同「ありがとうございましたーっ!」
カメラを振り向いて深々とお辞儀。
佐倉「そう、『天使』書き始めたきっかけってこの作品だったんだよ。可愛い女の子が書きたいってゆー」
高橋「それが何で桜木さんみたいな人を書く事にならはったんですか」
佐倉「わかんなーい……」(遠い目)
古田「しかしかなり手を入れたね今回」
佐倉「うん。三年前に書いてた時には見えなかったとこ見えてたからね」
澤田「三年前のあの苦労は一体……」(遠い目)
佐倉「重要な場面は全部残したよ」
諒介「重要なんだから当然だろう」
古田「今回いちばんおいしい役は高橋君じゃないの?」
諒介「プチ古田」
高橋「それはどう受けとめたらええんでしょうか」
古田「重鎮って事だよ」
澤田「BBの第三部で予定していた展開の伏線を『ビター』と今回に全部入れなアカンかって、その辺りの立ち回りに気ィ遣てんけどな。高橋君が上手い事合わせてくれて助かった言う事や。和泉はまた勝手に走りよるし!」
諒介「いや、あれはウダッチが…」
澤田「どうなんや、ウダッチ」
佐倉「わかんなーい…。よそよそしい奴だなとは三年前から思ってたけど…」
一同、暗い顔。
一同「………まさか自分からセリフ取りに来るとはな!!」
澤田「三年前には一言も喋らへんかったやんか」
佐倉「しかもあれ!どゆことよ!作者もびっくりのあの態度!」
諒介「…作者も…?」
古田「アドリブで1ページ合わせるこっちの身にもなってよ」
佐倉「文句はウダッチに言ってよー。出番終わったら姿見せやしねえ!…まあ古田もスゲエと思った…けど、今回の功労賞はマジで高橋」
一同拍手。高橋照れまくり。
古田「…はああ。終わったねえ」
澤田「アホ、それ言うたら危険やって!」
佐倉「……だああああああああああ」
佐倉の両目から滝。ドドドと激しい音を立てて水位がどんどん上昇。水しぶきを上げて動き回る出演者達。
諒介「終わってない!全然終わってない!少なくとも俺は!」
佐倉「だってもう由加にも澤田にも会えないんだもー。うわあああああああ」
古田「僕はいいの?」(なぜか一人平然と渦の中を回っている)
河上「うわ、な…流される…っ」(既に流されている)
諒介「終わられたら困る!こんな…うぷっ。まだ…げほっ」(溺れ)
一同「がぼがぼがぼがぼ」
放送「…構内、浸水により全線の運転を見合わせております…」





2001.6.1


【2011年度版アトガキ】
ここまでお読みくださった皆様、アトガキから読まれる方も、ありがとうございます。
この物語は澤田視点の外伝として、BBシリーズの中では最後に書かれた物であり、10年前の発表時にも「第10話」として掲載した物です。
今回の再掲載にあたって、考えた末、「第8話」としてお届けすることに決めました。
いや、その、ね。うん、最後に置くには、内容的に中途半端な気がしました。
読む順番にこだわりはないんですけど(苦笑)作中の時間の流れに沿ってお届けするのがいいかな、と思いました。
10話になったのは、由加編を書き上げた後にも、なかなか書き進む事が出来なかったからで…。ああ、すみません。(汗)それだけ、澤田視点が難しかったという事です。
10年前の楽屋落ちアトガキでも言ってますが、3年がかりで構想を練り、大幅に書き直してやっと出来た作品です。
それにやっぱり、物語の最後は由加で締めたかった。
あのラストの後に、もう、付け足す物はありません。
そういう意味もあって、順序を入れ替えました。
残すところ、あと2話。最後までおつきあいいただければ幸いです。
それにしても澤田…(笑)。ああ、もう、笑うしかないです。
恥ずかしくて死んじゃう。(爆)


佐倉蒼葉 2011年4月2日


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