・人生のお味・

記憶のための記録

【御挨拶】
ここまでお読みくださった皆様、本当にありがとうございます。
BAND-AID BRIDGE、ようやく完結いたしました。感無量………
と。ここで。一つ気になる事がある……(五七五)と思うあなたは正しい読者。

「諒介は、由加を待たせてまで、何を言おうとしていたのか?」

それを明らかにしないまま完結させてしまって、本当に申し訳ありません!!
この件に関しては、順を追ってお話しさせていただきます。


【記録】
この作品は98年2月に第一作『バンドエイド・ブリッジ』を執筆してから、どうにも暴走止まらない三人を抑えきれず、彼らの勢いにひっぱられて書いた物です。
三ヶ月後の4月末にはもう、発表した八話と『インサイドアウト』をほとんど書き終えて、この『ビタースウィート』の一部(約4ページ分の量)が書けていました。

その間に、『ホームワード』『ブルーベリー』『バックエイク』と順に発表。
走り続けていた彼らが突然立ち止まって(つまり筆が止まって)ようやく、『スウィート』以降を手直ししながら、実に二年がかりで発表してきました。

番外編の『お江戸からくり橋騒動顛末』や諏訪野キョウコさんとの共同企画『君さえいれば』を書くまで、二年間、彼らは足を止めていた事になります。
その事を心にお留め置きいただいた上で……
この番外編二作品は、彼らが再び走り出すきっかけとなりました。BB時代劇のアイディアをくださった高崎麻子さんと二次創作に挑戦させてくれた諏訪野さんに、この場を借りてお礼申し上げます。


【きれいになったね】
これは、番外編二本を書いている時の作者の実感でした。
由加自身が気づいてなかったとはいえ、構想を練り文章を書いている時、恋をしている由加は本当にきらきらして可愛かったのです。


【静かな映画】
「萌の朱雀」です。


【めっちゃ恥ずかしいわ】
……………作者はもっと恥ずかしいわッ!!
最終話という事で、苦手なラブシーンてんこ盛り。イヤでもこれを通らないと由加の成長はない。砂吐いた皆様、本当にすまない。句読点を打つたびに倒れた作者に免じて許ちて。


【みんないい子】
それが親心。
BBを書き始めた当初から目標に据えていた事の一つに「一人一つ、欠点を書く」というのがありました。物事の良い面だけ連ねていれば書く方も気分は良いですけども。
醜いもの恥ずかしいもの、そういった事からも目を逸らさずに、というのは、作者としてもかなりしんどかった。書きながら内心で「由加ぁっ!」「澤田ーっ!」「諒介ぇぇぇぇ!」と怒りの卓袱台リバースを繰り返し、でもリセットしないで書き続けたのは、『彼らを描ききりたい』、その一心でした。ダメなとこもあるけど、私には愛しい奴らです。


【今回唯一のNG】
「彼らの勢いに引っ張られて」と言いましたが、もちろん引っ張られるだけではダメです。
勢いで出てくる言葉こそ、彼らの個性を表すものとして重要だと思って、脱線しない限りは極力残すようにしています。「漁夫の利」とか「澤田さんとキスしたの?」とか。
最終話という事で今回は緊張感漂う中、特にNGもなく進んでいましたが(コピペも多かったしな)、それでも天然娘・由加はやってくれました。諒介の眼鏡が折れた場面にて。

「セブン見てなかった?」
「再放送で見てたけど!」

由加、そんな事を本気で言うな。緊張感台無し……作者遠い目……諒介も倒れた………


【軌道修正】
元々、三部構成を予定していたのは、やはり「諒介が何を言おうとしているのかを明らかにする」のを目的とした展開を考えていたためです。
二部構成に変更になったのは、第三部をばっさりと切り捨てたのではなく、「今書くべき事はこの『ビタースウィート』一話に全部収まる」と判断したからでした。

そうして、二年前に書いた分を元に、新しく書き起こしたのがこの作品です。
不必要と思いながらも、中嶋君の結婚式での賭なんて些細なエピソードを残したのは、二年前から続くこの作品の雰囲気を壊したくなかったから。
諒介を見送る由加と澤田の居場所はこういう所なんだって伝われば嬉しいです。
(本音:でも結婚式で賭は非常識だぞおまえら!)


【諒介の真意】
「話が出来るような時が来るまで待って欲しい」
そう言ったのは諒介でしたが、言い換えれば、話が出来る時が来るのを彼も待っていた事になります。彼が話せなかった理由は、本文でお読みいただいた通りです。
言い訳がましいけれど、二年前に書いた分は、そこで終わっています。

その先をどうするか、あれこれ考え、ラストシーンという目標を定めていくつかの場面設定を用意し、番外編を書き……それでも。彼は語ろうとはしなかった。語れなかったんです。

二年前に筆が止まった場面は、「諒介が語れない」という理由で一度はボツになりました。そうして書き進めていっても、同じ壁にまたぶつかりました。
ここは彼が語るべき場所ではないのだ、…と考えて、このまま完結させる決心をしました。
この作品……BAND-AID BRIDGEでは、彼の心を描く事が出来ないのです。


【いつか】
そんな訳で、この作品は次の物語へのスタートラインでもあります。
諒介は「いつか」と言いかけていました。
それがこの作品では叶いませんでしたが………

読んでくれて本当にありがとう。そして、私に書く力を与え続けてくれたすべてに感謝を。
私を支え、励まし続けてくださった読者の皆様に。
インスピレーションを与えてくれた物語の神様に。
私に破壊と再生をもたらし、絶望と希望をくれた人に。
築地の町と勝鬨橋に。泣き虫の由加、心優しい澤田、物語を牽引した諒介の三人に。

ありがとう。私も橋を越えました。

ここから彼らは歩き始めました。新しい物語に向けて。
どうか、また、彼らと……諒介と出逢ってください。
彼らは生きていますから。人生は、物語の連続なんですから。

佐倉蒼葉 2000.11.21


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